Pythonを使って音声認識を行う場合、音声データを正しく前処理することが重要です。ここでは、Pythonを使って音声データを前処理する方法について説明します。

1. フレーム化

音声データを扱う場合、長時間の音声データを1つのまとまりとして扱うと、データ量が大きくなりすぎるため扱いづらくなってしまいます。そこで、音声データをフレームと呼ばれる小さな単位に分割することで、扱いやすくします。フレーム化には、以下のようなコードを使用できます。

import librosa

# wavファイルの読み込み
wav_data, sr = librosa.load("audio.wav", sr=16000)

# フレーム化
frame_length = 0.025  # フレームの長さ (秒)
frame_stride = 0.01  # フレームのストライド (秒)
frame_length_samples = int(round(frame_length * sr))
frame_stride_samples = int(round(frame_stride * sr))
frames = librosa.util.frame(wav_data, frame_length_samples, frame_stride_samples)

2. プリエンファシス

音声データには、高周波成分が含まれています。これは、音声が録音された環境によって異なり、音声データ全体のスペクトルが歪んでしまいます。そこで、プリエンファシスと呼ばれる処理を行い、高周波成分を強調することで、音声データのスペクトルを均一化することができます。

import numpy as np

# プリエンファシスフィルタ
pre_emphasis = 0.97
emphasized_wav = np.append(wav_data[0], wav_data[1:] - pre_emphasis * wav_data[:-1])

3. スペクトログラム

音声データを可視化する場合、スペクトログラムがよく用いられます。スペクトログラムは、音声データの周波数成分を時間の経過に沿って表現するグラフです。スペクトログラムを作成するには、以下のようなコードを使用できます。

import matplotlib.pyplot as plt

# スペクトログラムの作成
spectrogram = librosa.feature.melspectrogram(emphasized_wav, sr=sr, n_mels=128, fmax=8000)

# スペクトログラムの表示
plt.figure(figsize=(10, 4))
librosa.display.specshow(librosa.power_to_db(s
pectrogram, ref=np.max, y_axis='mel', fmax=8000, x_axis='time')
plt.colorbar(format='%+2.0f dB')
plt.title('Mel Spectrogram')
plt.tight_layout()
plt.show()

4. MFCC

音声認識では、スペクトログラムをそのまま特徴量として使用するよりも、MFCC (Mel-frequency cepstral coefficients) と呼ばれる手法を用いることが一般的です。MFCCは、音声データのスペクトログラムをフーリエ変換したデータに対して、メルフィルタバンクをかけて周波数領域を圧縮し、更に離散コサイン変換を行うことで得られる特徴量です。

# MFCCの作成
mfccs = librosa.feature.mfcc(emphasized_wav, sr=sr, n_mfcc=20)

# MFCCの表示
plt.figure(figsize=(10, 4))
librosa.display.specshow(mfccs, x_axis='time')
plt.colorbar()
plt.title('MFCC')
plt.tight_layout()
plt.show()

以上が、Pythonを使った音声データの前処理方法になります。これらの前処理手法を用いることで、より高い精度の音声認識を行うことができます。